「社内ネットワークを作りたい」と言われたら
新しいオフィスへの移転、支社の開設、あるいは既存環境の見直し——社内ネットワークの構築が必要になるタイミングは意外と多いものです。
しかし、専任のネットワーク担当がいない中小企業では、情シス兼務の担当者や総務が対応を求められるケースがほとんど。「何から手をつければいいのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、小規模オフィス(5〜50名程度)の社内ネットワーク構築を、失敗しないための手順に沿って解説します。
まず決めるべき3つのこと
1. 何をネットワークに繋ぐのか
まずは社内でネットワークに接続する機器を洗い出します。
- PC — デスクトップ・ノートPC(有線/無線)
- プリンタ・複合機 — 共有プリンタ
- IP電話 — クラウドPBXを使う場合
- NAS・ファイルサーバー — 社内ファイル共有
- 防犯カメラ — IPカメラ
- 来客用Wi-Fi — ゲストネットワーク
この一覧がネットワーク設計の出発点です。「あとから防犯カメラを追加したい」「会議室にだけWi-Fiが欲しい」といった要望は、後から追加すると工事費が余計にかかるため、最初の段階で洗い出しておくことが重要です。
2. 有線か、無線か、両方か
| 方式 | メリット | デメリット | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 有線LAN | 安定・高速・セキュア | 配線工事が必要 | デスクトップPC、NAS、複合機 |
| 無線LAN | 配線不要・柔軟 | 干渉・速度低下のリスク | ノートPC、スマホ、タブレット |
結論としては、固定席の機器は有線、モバイル端末は無線の併用が最もバランスが良い構成です。
3. インターネット回線の選定
オフィスの規模と用途に応じて、適切な回線を選びます。
| 規模 | 推奨回線 | 月額目安 |
|---|---|---|
| 5〜10名 | 法人向け光コラボ / フレッツ光 | 5,000〜10,000円 |
| 10〜30名 | フレッツ光ビジネスタイプ(固定IP付き) | 15,000〜30,000円 |
| 30名〜 | 専用線(帯域確保型)or 複数回線冗長 | 要見積り |
上記はベストエフォート型(最大速度は保証されない)が中心です。通信品質を確実に確保したい場合は帯域確保型の専用線(イーサアクセス等)がありますが、費用は帯域幅に応じて月額数万〜数十万円と大きく変動します。まずは要件をもとに回線事業者に見積りを依頼することをお勧めします。
ネットワーク構築の5ステップ
ステップ1:現地調査と要件整理
オフィスの図面を確認し、以下を把握します。
- 各席の配置と数
- サーバールーム(分電盤・MDF)の位置
- 天井裏・床下の配線スペースの有無
- 電源コンセントの位置
この段階で「将来の席数増加」「フロア増設」の可能性も確認しておくと、あとから困りません。
ステップ2:ネットワーク設計
現地調査の結果をもとに、以下を設計します。
- IPアドレス体系 — サブネット設計、DHCP範囲の決定
- VLAN設計 — 業務用とゲスト用のネットワーク分離
- 機器選定 — ルーター、スイッチ、アクセスポイントの機種と台数
- 配線経路 — ケーブルのルートと長さ
小規模オフィスでもVLAN分離は必須です。来客用Wi-Fiと業務ネットワークが同じセグメントにあると、セキュリティリスクが生じます。
ステップ3:機器調達と配線工事
設計に基づいて機器を発注し、配線工事を行います。
工事のポイント:
- ケーブルはCat6以上を推奨(予算に余裕があればCat6A) — Cat6なら55m以内で10Gbps対応、Cat6Aなら100mまで対応
- 予備のケーブルを2〜3本多めに配線 — 席の増設時に追加工事が不要になる
- ラベリング — 各ケーブルの両端にポート番号を記載。これをやらないと障害時に地獄を見ます
ステップ4:設定と動作確認
機器の設定を投入し、以下を確認します。
- 全席からインターネットに接続できるか
- プリンタ・NASに全PCからアクセスできるか
- ゲストWi-Fiから業務ネットワークにアクセスできないか(分離の確認)
- 通信速度は想定通りか
ステップ5:ドキュメント整備と引き渡し
構築後に最も重要なのがドキュメントです。
- ネットワーク構成図(物理・論理)
- IPアドレス一覧
- 機器のログイン情報
- 配線図(フロアのどこに何番のケーブルが通っているか)
ドキュメントがないネットワークは、担当者が変わった瞬間にブラックボックスになります。
やりがちな失敗
「家庭用ルーターで十分」
5名程度のオフィスなら家庭用ルーターでも動きますが、10名を超えると限界が来ます。同時接続数の上限、NAT性能の不足、VPN非対応——業務で使うには力不足です。
「Wi-Fiだけで全部やろう」
無線LANは便利ですが、有線と比べて安定性に劣ります。複合機やNASなど大容量データをやり取りする機器は、有線接続が鉄則です。
「セキュリティは後回し」
「まず繋がればいい」で構築して、セキュリティ対策を後回しにするケースが多いですが、後からVLAN分離やファイアウォール設定を追加するのは、最初から設計するよりコストがかかります。
費用の目安
小規模オフィスのネットワーク構築にかかる費用は「機器代」と「工事費」に分かれます。
機器代の目安
| 機器 | 5〜10名規模 | 10〜30名規模 |
|---|---|---|
| ルーター | 3〜8万円 | 8〜20万円 |
| L2スイッチ(24ポート) | 2〜6万円 | 6〜15万円 |
| 無線AP(1台あたり) | 1.5〜4万円 | 3〜6万円 |
| 機器合計目安 | 8〜20万円 | 20〜50万円 |
※ Cisco・YAMAHAなどエンタープライズ向け機器の場合。家庭用機器は安価ですが、同時接続数・VPN・管理機能の観点から業務利用には推奨しません。
工事費の目安
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| LANケーブル配線(20本以内) | 8〜15万円 |
| ネットワーク設計・設定 | 5〜15万円 |
| 動作確認・ドキュメント作成 | 3〜8万円 |
| 工事合計目安 | 15〜35万円 |
5〜10名規模の総額目安:25万〜55万円
10〜30名規模の総額目安:45万〜100万円
現地の配線難易度・機器グレード・要件により変動します。正確な費用は現地調査後にご提示します。
推奨機器の選び方
ルーター
YAMAHA RTXシリーズ(中小企業向け定番)
- RTX1300:50名以下のオフィスに最適。SD-WAN・VPN・ファイアウォールを1台で賄える。
- RTX830:20名以下の小規模オフィス向けエントリーモデル。コストを抑えたい場合に有効。
Cisco ISRシリーズ(拠点間VPNが多い・将来拡張性重視の場合)
- ISR 4321:50名超・複数拠点のVPN接続が必要な環境向け。
スイッチ
- Cisco Catalyst 9200L:PoE+対応でIPカメラ・APへの給電も可能。管理機能とコストのバランスが良い。
- YAMAHA SWX2320:YAMAHAルーターとの親和性が高く、管理を一元化できる。
無線アクセスポイント
- Cisco Catalyst 9136:Wi-Fi 6対応、高密度環境向け。
- Ruckus R350:コストパフォーマンスが高く、小規模オフィスに最適。
機器選定は要件によって最適解が異なります。NET INNOVATIONではマルチベンダー対応のため、ご予算・要件に応じた最適な機器をご提案します。
よくある質問
Q. Wi-Fiだけで全部まかなえますか?
動かすことはできますが、おすすめしません。複合機やNASなど大容量データをやり取りする機器、またはデスクトップPCは有線接続が安定・高速です。無線LANは干渉・速度低下のリスクがあり、業務システムのトラブルにつながることがあります。
Q. 工事中に業務を止めなければなりませんか?
配線工事は業務時間外(夜間・休日)に対応することが多いです。機器の設定・切り替え作業は短時間(数時間程度)で完了するため、業務への影響を最小限に抑えられます。
Q. 既存の機器を流用できますか?
状態・スペックによります。まず現状調査を行い、流用可能な機器と交換が必要な機器を明確にしてからご提案します。無理に新品に買い替えずコストを抑えることも可能です。
Q. 構築後のサポートはありますか?
はい、月次の定期点検や障害時の緊急対応など、保守・運用サポートプランをご用意しています。「構築後の運用が不安」というお客様にも多数ご利用いただいています。
自社で対応が難しい場合
社内にネットワークの専門知識を持つ人材がいない場合、設計だけでもプロに依頼するのが賢い選択です。
NET INNOVATIONでは、小規模オフィスからエンターテインメント施設のスイッチ50台超の更改まで、幅広いネットワーク構築を手がけています。現地調査から設計・施工・保守まで、ワンストップで対応可能です。
- 現地調査・お見積りは無料
- Cisco、YAMAHA、Fortinet等マルチベンダー対応
- 構築後の保守・運用サポートあり
「オフィスのネットワークを一から作りたい」「今の環境を見直したい」という方は、お気軽にお問い合わせください。